の お話
「ぬん」は、ものづくり活動家・おやまかなの活動名です。箒と木桶をつくりながら、ものづくりで人々をつないでいく活動をしています。
ものづくりの世界に飛び込んだ私を受け入れてくれた、たくさんの人とのつながりで今があります。なにもなかった私の人生を、箒と木桶が「なりたかった私」まで導いてくれたんです。だから私も、みなさんの日々がひらいていくような道具をつくります。
箒でサッと床を掃くとき、
今日を生きていることが嬉しくなる。
木桶で味噌を仕込むとき、
体温が少し上がって明日の可能性に
わくわくしてくる。
やさしく心をゆらす道具たち。
それが日常にある豊かさを、
私は知ってしまいました。
だから、今度は私が「ものづくり活動家」として、だれかの小さな出会いを届けたい。その出会いで、みんなの人生がわくわくし始めたら最高だなって。みんなの日常で、大好きなものづくりが続いていったら、言うことないなって。
人と道具の温かさをじんわり伝えていくこと。ちょっと大袈裟かもしれないけれど、それが私が箒や木桶に出会った理由。そして、命をとおしてやるべきことなんじゃないかな、なんて感じてます。
作家について
ものづくり活動家・おやまかな
- 1974年 須賀川市生まれ。大手飲料メーカーで20年勤務。
- 2020年 フォトグラファー、ほうき職人、木桶職人、としての活動を本格的にスタート。
- 2022年 なんでもない日が特別になる写真館「シロヤマ写真館」を須賀川市で開業。
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同年5月
福島県川俣町の地域おこし協力隊として川俣町内の畑でホウキモロコシをつくり、箒の製作販売をおこなう。
また、川俣町の鴫原風呂桶店に通い、木桶の製作技術を学びながら販売の手伝いも並行。 -
2024年
「ものづくり活動家・おやまかな」として、「ぬん」という屋号で活動を始める。
箒と木桶を自らつくるだけでなく、作り手の応援者として活動を展開している。
鴫原風呂桶店
木桶づくりを教えてくれる人を探して、川俣町の「鴫原風呂桶店」にたどりつきました。
鴫原さんは、桶屋だったお父さんの跡を継ぎ、小学生のころから60年以上木桶をつくってきました。現代では数少ない、生粋の桶職人です。鴫原さんに出会って、私はますます木桶に惹かれ、「この技術と文化をなくしたくない」と思うようになりました。
鴫原さんと私は、いわゆる“師弟関係”とは少し違っていて、それがちょっとおもしろい。私が桶をつくるのを見て「もっとこうだな」と教えてもらうこともあるし、私が鴫原さんに「あの桶づくり、終わりました?」と確認して作業が進むこともある。なんだか持ちつ持たれつな関係で、気に入っています。
猫と暮らし、チャーミングで、ものづくりに妥協を許さない。私はこの愛すべき木桶職人と、みなさんをおつなぎしたいなあと、いつも思うのです。
ほおき箒のつづく
1840年代から、栃木県鹿沼市で受け継がれてきた「鹿沼箒」。ずっと大切に守り抜いてきたタネと技術を分けていただいて、私の箒づくりは始まりました。
ぬんの箒は、原材料であるホウキモロコシのタネを福島県内の畑で愛情をもって育てるところから。美しく掃きやすい箒になるように、毎日丁寧にお世話しています。無農薬での栽培、収穫、選定、脱穀、茹でてから天日で乾燥させて——
1本の箒をつくるために、こんなにたくさんの工程があることを、知らない人のほうが多いかもしれません。
工房で1本1本丁寧に編み上げた箒は、見ているだけで嬉しい。そして、掃けばサッとホコリが集まって、また嬉しい。日々の何気ない瞬間に、よろこびを届けてくれるんです。畑や工房からつづく、豊かな日常の道具です。
木桶のつづく
桶でおいしいものを醸すのは、本当に豊かな時間です。
私自身も木桶での味噌仕込みを続けるなかで、本当に使いやすい形状の味噌桶をつくりました。日常に溶け込んで、使う人のそばに寄り添う“生活者の味噌桶”です。
仕込むときも、食べるときも、熟成中だって我が子のようでかわいい。木桶に仕込むからこそ生まれる愛着や味わい深さをぜひ、体験してほしいと思います。
自宅で“桶活”、はじめてみませんか。